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穂木の準備
① カット
穂木の下部をナイフなどで両側から斜め45度を目安にカットします。
オレンジ色のコーティングがしてある面が上部です。反対側をカットしてください。
※角度は厳密でなくても構いません。断面を綺麗に切ることが最優先です。
【なぜ斜めに切るのか?】斜めにカットすることで断面積が広がり、水の通り道である「道管」が大きく露出するため、吸水効率が格段に良くなります。
また、植物は傷口を修復しようと「カルス」(人間でいうカサブタのような組織)を形成します。このカルスが発根の土台となるため、切断面を広く確保することは発根促進に直結します。


② 芽の調整
穂木の下部にある芽を取り除き、上から1~2つ程度の芽を残します。
(土に埋まる部分の芽は手で優しく取り除いてください)
【芽の調整の理由】土に埋まる部分に芽があると、そこから腐敗が進む原因になります。また、不要な芽を取り除くことで、植物のエネルギーを「発根」に集中させることができます。
残す芽は1つでも2つでも構いません。1つに絞った方が強い枝が出やすくなります。
③ 吸水(水揚げ)
カップなどに水を入れ、穂木を1~2時間程度浸けて吸水させます。
(穂木の半分くらいが水に浸かる程度の量)
【水揚げの重要性】カットした直後の導管内には気泡が入っていることがあり、うまく水を吸い上げられません。しっかり時間をかけて吸水させることで導管内の空気を抜き、細胞の隅々まで行き渡らせ、挿し木直後の水切れを防ぎます。吸水時間は長くなっても構いません。
挿し木作業
① 用土の準備
透明ポットの下から1~2cm程度、鹿沼土を入れます。
【鹿沼土について】鹿沼土は無菌で、通気性と保水性のバランスが良く、発根管理に最適な用土です。また、虫が湧きづらいため、室内管理にも最適です。
やや酸性が強く、発根後のイチジクには最適な土では無いので、春以降の植え替え時は鹿沼土を使う必要はありません。
② 穂木を挿す
穂木を①の鹿沼土に乗せます。根を早く発見できるように、少し端(ポットの側面寄り)に寄せて挿すのがおすすめです。
【芽について】穂木準備で取り除かなかった上の芽は必ず地上部に出してください。上の芽から葉が展開して将来的に枝になります。芽を埋めてしまっても大きな問題にならない場合が多いですが、芽から腐敗してしまうことがごく稀にあります。

③ 土を足す
鉢の上部1cmくらいまで鹿沼土を入れて完成させます。この時、穂木がやや斜め(80度~70度程度)に立つように調整します。(垂直でも大丈夫です)
【やや斜めにする理由】少し難しい話ですが、発根に必要なホルモン(オーキシン)は芽で作られ重力で真下に落ちていきます。垂直に挿すより80度程度に多少傾けた方が、発根箇所にホルモンを集めやすく、発根を促進しやすくなると考えています。垂直に挿しても問題なく発根します。

④ 初回水やり
下から流れ出るまでたっぷりと水を与えます。透明の水が出てくるようになるまで与えてください。
【微塵(みじん)を抜く】たっぷりと水を与えるのは、水分補給だけでなく、土に含まれる細かい粉(微塵)を洗い流すためです。微塵が残ると土の中で固まり、呼吸に必要な酸素の通り道を塞いでしまいます。
出来れば初回に、底から流れ出る水が透明になるまで、弱い水をかけ流してやると良いです。
その後の管理
・室内での管理期間
春まで(目安は霜が降りなくなる頃まで)
※室内の暖かさで休眠から目覚めさせて発根させます。休眠に入っていないイチジクは非常に寒さに弱いです。葉や根が出ても途中で屋外に出さないようにしてください。
【途中で外に出してはいけない理由】室内の気温で休眠から覚めて成長しています。休眠状態に入っていないイチジクは寒さにとても弱いので、霜の心配が無くなる時期までは室内で管理してください。(栽培2年目以降の冬は屋外で大丈夫です)
・置き場所
鉢皿を使い、日中は明るく暖かい室内に置きます。(サーキュレーターなどで空気が淀まないようにすると更に良いです)
【適温は20℃前後】休眠枝であっても、発根(カルス形成)にはある程度の温度が必要です。ただし、エアコンの風や直射日光が直接当たる場所は極度の乾燥を招くため避けてください。適温は20℃前後ですが、それより低温でも日数は延びますが発根します。
・発根確認前の水やり頻度
2~3日に一度程度を目安に与えます。土の表面が乾く前に、底から流れ出るまでたっぷりと与えてください。
【発根までは早めに水やり】根がない状態での給水は、切断面からの吸い上げのみに頼っています。一度でも完全に乾燥させると、細胞が死滅し発根しなくなります。「乾かさない」ことが最重要です。土の表面が乾燥し切る前に次の水やりをするのがベストです。発根後は根があることで吸水力が高まるので、発根前より間隔を開けても大丈夫です。(屋外に出すまでは5日に1回程度)
土に溜まった古い水を押し出す目的もあります。底のから流れ出る程度が目安です。余分な水は抜ける土なので、量が多すぎる分には問題ありません。(鉢皿に溜まった水は捨ててください)
・発根の目安
気温や環境によりますが、1ヶ月~4ヶ月程度で発根開始します。※絶対に途中で抜かないでください。
基本的には、先に葉が動き出し、その後発根します。
【抜いてはいけない理由】気になって抜いて確認したくなりますが、せっかく形成された微細なカルスや出始めの根が、抜いた摩擦で切れてしまいます。一度リセットされると再発根の確率は激減します。透明ポット越しに根が見えるまで我慢してください。
・発根後の水やり
根が確認できたら、土の表面が乾いてからの水やりに切り替える。
・屋外管理への移行
葉が動き出しても、霜の心配がなくなるまで屋外に出さない。霜の心配が無くなったら、徐々に日陰から慣らす。
想定される質問
Q.屋外で管理はできないの?
A.途中で室内→屋外の変更は出来ませんが、最初から屋外管理であれば可能です。できるだけ凍らないよう暖かい場所で管理し、室内同様の水やりを続けてください。(発根は春に気温が上がり始めてからになります)
Q.肥料はいるの?
A.肥料は不要です。肥料分があると、スムーズな吸水を妨げますので、与えないようにしてください。
